第25章 『シノビノニノ』~大野×二宮~
「紅茶でいいよね?俺、紅茶の気分だし」
「えっ?ああ、勿論いい、けど...だったら、聞かなきゃいいじゃ..」
「ああぁ??何か言った~?」
「いえ、紅茶でいいです!丁度俺も、紅茶の気分だった、っていうか~..」
俺のご機嫌伺いながら、へらへらするあんたに、
何だか増々腹が立つ。
俺は黙って紅茶の葉をポットに入れた。
テーブルの上で、皿を出してケーキを乗せる大野さんは、もう既にちょっとニコニコ嬉しそうになってる。
これで仲直りできるとでも思ってるらしい。
甘いんだよ...
今夜は許してやんない...
俺には指一本触れさせてやんないんだからね!!
いい香りが漂うティーカップを二つ持って、リビングに戻っていくと、ケーキを並べて、ソファーの上に正座する大野さん...
嬉しそうな顔で俺を見つめるその姿は、
まるで主人に従順な日本犬...
後ろに、ちぎれそうなほど振ってる黒い尻尾が見えるわ!!
「はい」
「ありがとね、ニノ♪じゃあ、食べよっか❤」
「......」
俺が黙って食べ始めるのを見て、
「いただきま~す!」
あんたは、ひとり明るい声で挨拶をして食べ始めた。
「あ..うめっ♪」
「......」
「よかったら、もう一個あるからさ、食べてよ」
「いらない...太るし...」
「そっか。そう..だよね...一個でいいよね~?じゃあ、俺が食べよっかな~?
甘いものは、別腹って?」
「......ごちそうさま..」
俺は、一人で何とか場の空気を変えようとしてるあんたを無視して、食器をさっさと片付けた。
......なんか、しょんぼりしてる...
視界の隅で、いつも以上に猫背になったあんたが見える...
......可哀想でなんか...ないし...