第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
懲役1年3か月...執行猶予は付かなかった。
雅紀には、十分に情状酌量の余地はあるが、社会的な関心の高さから、実刑は止むなかった。
それでも、検察側の求刑は4年6か月だったから、
それに比べれば、少ないものだった。
長野弁護士の勝訴、とはいかないまでにも、
十分頑張った結果、として、評価されるものなんだろう。
ひっそりと。
雅紀は刑に服した。
俺のせいで...
俺という人間と出会ったせいで、
雅紀の運命は大きく変わってしまった...
俺が居たから...
でも。
もうそれは言うまい。
雅紀は言った。
『人生はやり直しができる』
だけど、消すことはできない。
後戻りもできない...
いくら俺が後悔したとしても、
『俺のせいで』と嘆いたとしても、
もう、今までの人生は、変えることができない...
それなら...
これからを、どう生きるか?じゃないか?
今までの贖罪と向き合い、生きていく....
その答えにたどり着くまでに、どれ程の涙を流しただろう...悔やんでも悔やみきれない、己の罪...
それらすべてを受け入れ、俺はここまで来た。
長野さんに、今日という日を必ず知らせてくれるようにと、お願いしておいたんだ。
それは、灼けつく様な日差しが、ギラギラと降り注ぐ夏の日。
ニュースでは『この夏一番の暑さ』と連呼している。
一昨日も確かそう言っていた。
俺は、長い塀沿いに歩いてきた。
無機質なグレーのその塀が、社会と中とを遮断する巨大な要塞にも見えて...
その門が見える大きな桂の木の下で、
俺は止まった。
首を流れる汗をハンカチで拭って時計を見る。
9時40分...
早く来過ぎたか...
俺は少し苦笑いながら、桂の木の葉を手に取った。
こんな場所に不似合いなその葉の形は、どれもが同じハート型だった...