第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
呼ばれるまで、俺は控室にいた。
夕べも緊張して眠れないまま朝を迎え、
2時間余り乗っていた新幹線の中でも、
全く眠ることができなかった。
裁判で証言することに緊張している訳じゃない。
雅紀のためなら、何を話したってかまわない。
雅紀を救えるのなら、
何もいらない...
......いろんな思いが...
封印していたはずの雅紀への思いが、
次から次へと浮かんできて。
.........
あれほど会いたかった雅紀が、同じ建物に、今いるんだ。
そしてこれから、雅紀のいる部屋に行く。
雅紀の気配を、感じることができる。
......俺は、どうなってしまうのだろう?
外を走る車の音だけがわずか届くだけの、
静かな部屋の中で、俺は膝の上の拳を、
ギュッと握りしめた。
どの位時間が経ったのだろう?
駅まで迎えに来てくれた人が呼びに来て、俺はその後に従った。
「ここでしばらくお待ちください」
程なくして、中に入る様に言われ、
俺はその空間に入っていった。
俺の背より高い衝立が立てられた中に入らされて、宣誓書を読むように言われた。
大きく息を吸って読み始めたその時、
「翔..」
雅紀の声がして、俺は黙った。
「翔、何も話さなくていいんだ...俺は..」
『被告人は発言を控えてください』
.........雅紀...
雅紀の声を聴いただけで...
それだけで俺は、苦しくなる...
そこにいるんだ...すぐそこに。
雅紀が...
あんなに会いたかった雅紀が、すぐそばに、今...
「証人は宣誓を続けてください。」
.....そうだ。
俺は雅紀を助けるためにここに居るんだ...
忘れちゃいけない...
雅紀を、一日も早く自由にしなきゃいけない...