第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
世間は大騒ぎになった。
何年もの間、姿を眩ましていた少年が、
男とマンションに暮らしていた。
その男は、警察が捜索していることを知りながら、監禁を続けた。
未成年であったその少年と、
性的関係を持っていた。
あまりにセンセーショナルなその事件は、
マスコミの格好の餌食となった。
まだ未成年であるその少年の人権保護のため、名前はもちろん、本人を特定できるような情報は止められた。
しかし、近くの人々の口に、
戸を立てることは出来ず。
その少年は、
本来の家庭に帰ることは難しくなった。
世の中が騒いでいる最中。
渦中の少年は、ひっそりと山間にある小さな村にやって来た。
父方の遠縁の家に預けられたのだ。
表向きは病気の療養のため、
ということにしたので、
預けられたその少年が、外に出ないことを、誰も不審に思わなかった。
「翔ちゃん、買い物に行ってくるけど、
何か、欲しいもんあるかい?」
「あ、いえ、特には...」
「そうかい~?じゃあ、饅頭でも買ってくるからね...」
老夫婦が、軽トラックで出掛けていく音を聞きながら、少年は、
「饅頭は...あまり...」
と、小さく呟いた。
少年が暮らす、窓の少ない蔵のような部屋に、
冬の足音が近づく頃。
一人の紳士が、その家を訪れた。
「櫻井翔くん...だね?
相葉さんの弁護士の、長野と言います。」
少年は、渡された名刺を、
暫く眺めていたが、
ゆっくりと顔をあげ、長野と名乗る紳士を見た。
その紳士は、
感情のない硝子玉のような大きな目をじっと見つめて、優しく微笑んだ。