第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
「翔?...櫻井翔じゃない??」
すれ違った人に声を掛けられ、無意識に振り向いた。
「ねえ、櫻井...だよね?中学一緒だった...」
「......」
「忘れたの?俺だよ!小原...小原裕貴!」
俺は咄嗟に逃げ出した。
でも、腕を掴まれ、その場で固まった。
「櫻井?今どこにいるの?みんな探してたんだよ~...ねえ、櫻井...何で逃げるんだよ!!」
一気に思い出した。
『小原裕貴』
色のない、モノクロだった俺の中学生活の中で、俺が唯一心を許していた友達。
俺の家庭のことは何となく話していて、
まあ、あの人とのことは流石に言えなかったけど。
「頑張れよ」「俺にできることがあったら言って」
といつも励ましてくれていた。
彼がクラスにいるから、俺は学校にも行っていたのかもしれない...
「こっち向いて。よく顔見せてよ...櫻井、ずっと心配してたんだよ..元気なの?どこにいるの?...今何してるんだよ~?...ねえ、櫻井!」
ゆっくりと振り向いた。
懐かしい友人は、もうすっかり大人びていて、
声を掛けられなければ、分からなかった程だ。
「...小原..」
「よかった~!!忘れられちゃったかと思ったよ~」
「忘れてなんか、いないよ..」
小原は掴んでいた手首から、ゆっくり俺の肩に手を掛け、「ずっと、会いたかったよ...なんか、ますますイケメンになって...」
小原の目が、涙を浮かべて揺らめいていた。
「少し話そうよ。時間ある?」
話す...
話すって...何を話せばいいんだろう?
どこまで話していいんだろう?
小原は...どこまで今の俺を理解してくれるんだろう?
瞬時に浮かんだたくさんの疑問符に、俺は言葉も出ず、彼の顔を見つめた。