第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
有無を言わさぬ雅紀の目に、
もう俺は何も言うことが出来なくて...
「...はい...」
そう彼の後を追った。
その後の食事中。
さっきのことが嘘だったみたいに、いつもの雅紀になり、優しい笑顔で俺のことを見ながら話をしてた。
......雅紀...
その夜は、普通に愛し合った。
食事の片付けをして、風呂に入って、
いつものように雅紀に抱かれた。
俺の中を穿ちながら、
「愛してる」と何度も言ってくれた。
そして俺もそれに応えた。
......その日から。
俺から強請ることをしなくなった。
あれが食べたい、こんなものが欲しい、
そんな俺の我儘には、彼は笑って聞いてくれた。
ときどきは外にも連れて行ってくれ、一緒に服を選んだり、お洒落なイタリアンレストランで食事をすることもあった。
だから...
雅紀に俺から欲望のままに求めない、という言いつけも、それが当たり前なんだって、そう思うようになっていた。
自分から求めることは、いけない事なのだと。
そんな生活が1年続き。
もう自分が親から逃げてきて、雅紀のところに隠れて暮らしていることさえ、忘れつつあった。
そのくらい俺は幸せだったんだ。
雅紀に愛されることにも慣れ、
彼に身体を開く行為が苦痛だったことは、もはや昔のことになっていた。
でも、その時は、確実に...
音もなく俺たちの生活に忍び寄っていた。
大胆に人前に出て行くことも当たり前になっていた俺は、警戒心も無くなっていて...
その日俺は、新しい参考書を観たくて、
渋谷の本屋にひとりで出掛けていた。
知り合いに会うはずがない。
今までだって、会ったことがないんだから。
今日だって...
そう信じて疑っていなかった。