第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
それが、俺と父親との出会い。
運命の歯車が軋み出す音は、この時の俺には、まだ聞こえない。
そして、俺は父親という人に
引き取られることになった。
その人は34歳になる医師だった。
医学部の学生だったその人と、
中学2年生だった母親は恋に落ち、そして俺が生まれた。
でも、その人の両親がそれを許さず、
認知もされず、俺は父親に、生まれる前に捨てられたんだ。
そして今になって、父親だと名乗って俺を迎えに来た。養子縁組の話がまとまるのに半年かかった。
その人が、ちゃんと俺の父親であること。
経済的に、俺を養育していける人かどうか...
しっかりとした家庭を持った人なのか、
慎重に審査が為される。
「遅くなって悪かったな、翔」
その人は言ったけど、俺は何とも思わなかった。
淋しいとか、嬉しいとか、そんな感情は、
遠い昔に封印していた。
その人は、エスカレーター式の学校に俺を編入させた。俺は、それまでも、勉強しかしてこなかったから、学校はおろか、全国でも成績上位者に名を連ねるほどだった。
でも、何とも思っていたなかった。
父親だという人には、奥さんがいて、
後になって聞いた話だが、
その人は子どもが産めない身体なんだそうだ。
......だから。
その人は、俺を跡継ぎにするために引き取ったんだ。
そして俺は、表向き、両親と3人で新しい生活を始めた。
一見幸せそうに見えたその家庭には、
誰にも言えない闇があったんだ...
あれは、櫻井のうちに来て半年が過ぎようとしていた、蒸し暑い夏の夜だった。
父親は夜勤でいなかった。