第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
俺がここに来たのは、15の時。
中学生で俺を産んだ母親は、
その一年後に別の男といなくなった。
それから、俺の母親役だった祖母が、不慮の事故でなくなると、俺は施設に預けられた。
誰が聞いても眉を顰め、『気の毒にね』と憐れむが、
俺にとってはそれほど驚くようなことでもない。
なぜならば、それしか知らないからだ。
普通の家庭の温かさも、当たり前の幸せも、
俺には初めからなかったのだから...
俺の、涙無くしては語れない、
そんな、不幸を絵にかいたような半生も、聞かされたのは小学校高学年になってから。
だから、どこか他人事のような気がしていた。
だって、施設に来たのは3歳になったばかり冬。
もうその時の記憶もほとんど残ってはいない。
ただ、白髪頭の園長先生が、
「今日からここは、翔くんのお家だからね。」
そう言って頭を撫でてくれたこと...
広い庭の隅に、今にも崩れそうな雪だるまがふたつ、並んでいたこと...
覚えているのはそのくらいだ。
それから11年。
俺は中学2年生になっていた。
そんなある日。園長先生が応接室に俺を呼んだ。
「失礼しま~す」
入っていくとそこには一人の男性がいた。
「翔くん。君の本当のお父さんだよ」
.........
お父さん...?本当の?
...言ってる意味がよく解らない...
俺には、お父さんなんかいない...
本当も嘘も、父親と呼べる人は、俺には今までも、これからもいないんだから...
「翔くん、ここに座ってごらん...」
園長先生が優しく促しても、俺は黙ってその場に立ちつくしていた。
本当のお父さんという人は、
笑顔で俺のことを見ていた。