第23章 『逃げなきゃ!』 ~櫻井×二宮~
「いるっちゃ、いる、かな~?」
.........( ̄▽ ̄)
いるんだ...好きな人。
誰ともちゃんと、付き合ってないのは、心に秘めた人がいるからなんだ...
......そりゃあ、そうだよな...
いつもたくさんの女の子が、翔さんの周りにはいて、俺に嫌がらせするくらいご執心なファンもいて。
中には女優さんみたいな綺麗な子もいたりして。
「それが、誰か、気にならないの~?」
翔さんは俺にそう言ったけど、
「いいって!聞かないよ~...もう帰ろうよ!車まで競争ね!!」
俺は翔さんの顔を見ずに砂浜を走り出した。
......翔さんには、好きな人がいた。
心に決めた人が、ちゃんと居たんだ。
俺なんか、最初っから、ただの後輩でしかないんだ...当たり前すぎて...
当たり前すぎて......
泣けてくるよ...
帰りの車の中。
俺は、どうでもいいことを延々を話し続けた。
翔さんに、話題を変えられないように...
詰まんない、さして興味もないドラマや、見るからに中身のなさそうなRPGのゲームの話...
最期には話題が突きて、前の日に亡くなった名脇役の話まで......
翔さんは、嫌な顔もしないで、俺の話に相槌を打ち続けてくれた。
......その優しさが、胸に刺さった。
ここは、
この席は、俺なんかが占領してていいところじゃない。
可愛がられてたって、
所詮は後輩の1人に過ぎなんだ...
翔さんが思いを寄せる女の子が来たら、
俺の出る幕は、もうないんだ...
べらべらしゃべる俺は、
泣かないように、脚の上で強く拳を握りしめていた。