第23章 『逃げなきゃ!』 ~櫻井×二宮~
高校2年の時。
海を見に行こうって...
夕方から千葉の九十九里を目指したこともあったっけ。
でも、着いた頃には真っ暗で...
俺は翔さんと、誰もいない砂浜に座り、
真っ暗な海を見ながら、どうでもいい話をして時間を過ごしたっけ...
俺たちの間にある、人一人分の隙間は、
永遠に埋まることのない距離で、
翔さんとの関係は、どこまでいっても平行線のまま、決して交わることなんてないんだ....
そう思いながら聞く、波の音は、
俺の恋心へのレクイエムみたいだった。
....最初から分かってる。
出口はない。
報われることなんかない。
苦しいだけの、真っ暗な暗闇。
奥に行けば行くほど、
酸素がなくて苦しくなるんだ。
入り口で、引き返すべきなのにさ。
こんなにいつも近くにいたんじゃ、
戻ることなんか、出来るわけないよ...
だって、翔さんはいつも..
「..いないの?」
「えっ?何?...」
「聞いてないんだからぁ〜...もう、いいよ」
「何?聞くから!何て言ったの?教えてよ、翔さん!」
翔さんが俺に何て言ったのか、聞きたかったその質問は、
「ニノは好きな人いないの?」
だった...
......聞くんじゃなかった( ;∀;)
そんなこと聞かないでよ...
『あなたです、翔さん』
そう言ってしまったら...
俺はこの海で死ぬことになってしまうかもしれない。
衝動的に白い波に走って行ってしまう...
だから。
「...いないよ~...翔さんは?」
.........バカじゃないか?俺!!!
お決まりのこの流れに、どうして持っていったんだ。
そんなこと聞きたいわけないじゃん!
激しく後悔する俺に、翔さんはぼそっと言った。