第23章 『逃げなきゃ!』 ~櫻井×二宮~
翔さんは真っ直ぐに俺の前まで来て止まった。
俺はもう、心臓が破裂しそうにバクバクいって。
今にも倒れそうだった。
すると翔さんは、俺の手首を掴んで、
「ちょっと、一緒に来て...」
そう言ってまたもと来た方へ大股で歩き出した。
「いってらっしゃぁ~い!」
「頑張ってね!!」
「無理しないで~♪」
口々に言って3人は笑っていた。
こんな時に...
俺が、人生で一番悲しくて可哀想な、
そんな日に、気楽に笑ってる3人が、無性に憎らしかった...全くさ。
人の気も知らないで...
人目も憚らず、翔さんは俺の手を引いて、
カフェの中をずんずん歩いていく。
「あの...翔さん、どこ行くの~?」
不安な俺は、思い切って声を掛けた。
でも翔さんは何も答えてはくれずに、
外に出ても翔さんのスピードは落ちることはなく、俺はもう息が上がってしまって...
連れていかれたのは、
大學の駐車場。
翔さんは、自分の愛車のドアを開けると、
俺を押し込んで自分も運転席に乗り込んだ。
何度も、ここに乗ったこと、あるけど...
エンジンをかけて、シートベルトをする翔さん...その横顔からは、心の中が全く見えなくて...
これから、どこに行くの?
何で、こんなことするの?
俺のこと、怒ってるの?
いくつも浮かんできた疑問は、
俺の口から零れることはなくて...
走り出した車に、俺は黙って、
前を向いて小さくため息をついた。
......最後の、
これが最後のドライブなのかな?
ここに座りたいって願ってる女の子の視線を浴びながら、ここに乗るのは優越感だった...のに...
それも、今日でお終いだ。