第23章 『逃げなきゃ!』 ~櫻井×二宮~
人目も憚らず、泣いている俺に、
誰も声を掛ける人もいなくて...
すると、蹲る俺の耳に、
あの人の声が...
「ニ~ノ~!!ニ~ノ~...」
えっ?
慌てて立ち上がって振り返ると、
校舎の方から、こっちに向かって走って来る翔さんの姿が...
嘘でしょ!?
に、逃げなきゃ///
俺は、慌てて逃げだした。
涙でグシャグシャな顔を擦りながら、
俺は逃げた...
こうして。
俺はひたすら翔さんを避けた。
声を掛けられてるのに無視した訳じゃないよ~?
顔を合わさないようにしたんだ。
だから、スイーツ研究会のグループLINEも、
既読も付けずに無視を決め込んだ。
だって翔さんに会う訳に行かないもん!
俺のアパートも知ってるから、
友達のところを転々と泊まり歩いた。
大學からは少し遠いけど、実家にも帰ったりして、
家族を驚かせた。
......こんな生活、
いつまでも続ける訳にもいかないけど。
出来るだけ...
少しでも先に...伸ばしたかった。
......翔さんに振られるその瞬間を。
俺が逃げてる間にも、翔さんからは、何度も着信があった。
留守電にも、『話があるから...』
と入っていた。
大學の授業に出ると、潤くんに顔を合わせなきゃいけないし、ばったり他のメンバーに会うかもしれない。
だから、行かないで、バイトして過ごしてたけど。
それも限界。
そんなに逃げていられる訳もないんだ。
......いよいよ。
翔さんに振られなきゃいけないんだな、俺。
好きだって...
ずっと好きだった、ってさ。
最期にそう言いたい。
じゃなきゃ、可哀想すぎる...
俺の片想い。
成就できないとしても。
けじめをつけさせてあげなきゃ。