第23章 『逃げなきゃ!』 ~櫻井×二宮~
高等部の文化祭の時。
男子校だった伝統で、女装コンテストが行われるのが習わしで、俺は、当然のようにクラス代表としてエントリーした。
最初は絶対出たくなかったけど、
俺が出るって分かった翔さんが、
「ニノが出るんなら、俺もミスターに出よっかな?
副賞、京王プラザのペア宿泊券でしょ?
マジで、バカだよね~...あいつ等」
そう笑ってた翔さん...
後で大野さんに聞いた話だけど、
最初は絶対に出ないって言ってたのに、
ミスの方に俺が出るって聞いたら、翔さんの代わりに出るって決まってた人を下ろしてまで、自分が出るって...そう言ったんだって。
「全く。ほんとに翔ちゃん、ニノのこと好きだよね~」
そんなこと聞いて、舞い上がった俺は、
着たくもない黄色のチャイナドレスを着せられて、
ミスコンに出場...
当然ミスに、
翔さんはミスターに選ばれたんだ。
ステージで、ほっぺにキスされて、
もう、このまま死んでも幸せだって...
そう思ったんだ、けど...
副賞で泊まった京王プラザ。
俺を奈落の底に突き落とした、
36階からの東京の夜景...
これ以上ない、恋人たちのシチュエーション。
なのに、翔さんは、俺に指一本触れずに、
さっさと寝ちゃった...
クークーと可愛い寝息を立てて、
無防備な顔して眠る翔さんを見たとき、
俺は、気持ちを封印しようと決めたんだ。
俺の気持ちは、このまま、
誰にも言わずに、知られずに、
胸の一番奥に仕舞いこんで忘れてしまおうと...
一緒のベッドにそっと潜り込んで、
こっそり泣いてたあの日...
あの夜に...
もう翔さんのことで、泣かないって、
そう誓ったのに...
......また俺、泣いてるんだ...