第19章 『ささのはさらさら scene2』~松本×大野~
「自分で言うのもなんだけど...誰にも文句を言われないくらいに、全部、精一杯にやって来たんだよ...?」
「潤...偉かったね。頑張った...」
「智...俺もう、立派な大人...だよね?」
「うん...そうだね...立派なもんだよ...」
「だから....」
智が真っすぐに俺の顔を見ている。
次に俺が何を自慢してくるのか?とでも、思ってる??
......伝えたい、この想い
...今...君に...
俺は胸元からするすると、シャツの中に隠していたネックレスを取り出した。
長めのシルバーの先には、
そう...
ずっと、
片時も離すことなく持っていた、
二つのリング...
智は黙って俺のことを見ている。
俺は焦る気持ちを必死で落ち着かせながら、ネックレスを外し、二つのリングを抜きとった。
「智...俺、子どもだったんだ...あの頃...
ただただ、あなたが欲しくて...他には何にもなくても構わないって、そう思ってた...」
俺を見つめる智の目が、あんまり優しいから、
俺はちょっと泣きそうになる。
「...だから、智が勉強頑張れ、とか、世界を広げろ、ってそう言っても、正直分かんなかった...今が幸せなら、それが全てだって、そう思ってた。
でも...智がいなくなって、何にも無くなって...
正直ね、立ち直れないって...そう思って毎日泣いてたよ?でも...翔くんや、仲間が...家族が...
俺のこと支えてくれた...何より...
失った時初めて、智の言葉の意味が分かったんだ。
あのままずっと、智に溺れたまんまだったら、
きっと気付けなかった。」
俺は、掌の中の二つのリングを強く握った。