第19章 『ささのはさらさら scene2』~松本×大野~
...いつやる??
......今でしょ!!
あ、ちょっと古いか?
まあ、そんなの、いい!
俺はユニフォームの下にあるそれを、右手でぎゅっと強く握った。
......神様!!俺に力をください。
今日、ここで智に会えたのは、運命のはず...
だから。
止まっていた時計を、今日、この場所から、
俺の手で再び回し始めるんだ。
「...智...聞いて欲しい...」
その言葉に、彼は真っ直ぐな目を俺に向けた。
ふうぅ~...( ˘ω˘ )
俺は肩で大きく深呼吸してから、話し始めた。
「3年前、俺は智が突然いなくなって、目の前が真っ暗になった。絶望なんて簡単な言葉じゃ言えないくらい...
しかも、その原因が、俺があの日、美研で、智にしたことが原因だって...
正直死にたかったよ...
もう、智のいない毎日なんて、何の意味もなかったから...だけどね、智が俺のことは絶対に言わないまま退職したって聞いて...
俺は智がいつも言っていたことを思い出した」
「......」
「だから、死に物狂いで勉強した。誰にも文句を言われないために。
何より、智に会った時に、頑張ったね、って褒めて貰えるように...」
「潤...」
智の綺麗な瞳が、午後の柔らかな日差しを映して、キラキラしている。
「今の大学に進んで、友達もたくさんできた。
バイトもいくつかやってる。コンビニでは、この間失敗して店長に怒られてさ~...」
「ふふふっ...」
「サッカーも頑張ってる!もちろん勉強も...
俺さ、高校の教師になりたいんだ。智みたいな...で、サッカー部の顧問になって、子どもたちとインハイ目指すんだ!!」
智は俺の話を、頷きながら、微笑みながら聞いてくれてた。
.....その目に、力を貰って.....
俺は、ぎゅっと唇を噛んだ。