第19章 『ささのはさらさら scene2』~松本×大野~
えっ??何だ?
「まって~!!マロ~ン...止まってよ~」
走り去る子犬の後を、小さな男の子が追いかけて行った。
散歩の途中で逃げられたのかな?
よし!じゃあ、俺が捕まえてやろう!
俺は、その子犬を追いかけてダッシュした。
いくら小さくたって、犬は犬で...どんどん走ってくその姿を見失わないように、俺は懸命に走った。
銀杏の並木道を抜け、噴水の広場まで追いかけてくると、子犬が一台の車の横で座っているのが見えた。
よくある移動販売の車だった。
あ~、よかった。座ってるから、今のうちなら捕まえられそう...
俺は、子犬を刺激しないように、ゆっくりと近づいた。
「なんだよ~、どっから来たんだお前?腹空いてんのか?」
.........
この...声......
「じゃあ、一個やるよ...ほら、こっちおいで...」
.........まさか??
俺はその、フランクフルトを売る車に一歩一歩近づいて行った。
そこには......
会いたくて会いたくて仕方なかった、
その人が、子犬に笑いかけていた。
「...さとし...智なの?」
「......じゅん...」
その青い車の中からこっちを見ているのは...
忘れろったって、忘れるられる筈なんかない、
いつだって、どんな時だって胸の中にあった...
毎日夢にまで見ていたその人...大野先生が、そこにいた。
俺は夢を見てるのか?
会いたいって、そればっかり思っていたから、
ついに幻想が見えるようになってしまったのか...
おばけ...な訳ないか?昼間だし...
強いて言うなら、生霊とか?
言葉も出ずに、その場に立ち尽くしている俺に、
「潤?...ホントに潤なの??」
って...
車の中で、微笑む智は、俺の前から居なくなってしまったあの頃より、髪が長くて、少し痩せた感じに見えた。