第19章 『ささのはさらさら scene2』~松本×大野~
智が学校から去って、いつの間にかマンションも引き払われていて、いよいよ俺と智を繋ぐものは何もなくなっていた。
俺は部活を引退し、受験勉強に没頭した。
それまでと全く別人のようだと、周りは驚いていた。
元々勉強ができなかったわけでも、
成績が悪かったわけでもなかった俺は、
なり振り構わず勉強した結果、
センター前の模試では難関と言われる志望校でさえ、A判定を叩き出すまでになっていた。
全ては、大野先生のため...
大学に行け。
夢を探して、自分の手でつかみ取れ。
それには、自分に合った大学に進学しなきゃダメ。
応援するから...
頑張れ、潤...
今でも、そう言って励ましてくれた先生の顔が、はっきりと浮かんでくる。
先生...
智...
俺、頑張る!!誰にも負けないように、必死にやる...だから...どうかもう一度...
お願いだから、俺の前に姿を見せて///
明日はいよいよセンター試験、という金曜日。
俺は翔と並んで帰り道を歩いていた。
「あ~...先生、どこ行ったのかな~...潤のこんな頑張り、見せてやりてぇ~よ、マジで...」
「...翔、大丈夫だよ、きっと会えるさ。
だって、俺にとって智は運命の人なんだ...
どこに居たって、必ずまた会える...俺は信じてるから...」
「...潤...」
そう笑った俺のこと、翔は何も言わずに、ただ見ていた...
...きっと、
こいつ、イッちゃってるやべ~奴だ、って。
そう思ったのかもしれないね。
でもね。
俺には分かってるんだよ...
あの人には、会えるんだ...
絶対にね?
だって俺...
俺は、ポケットの中の小さな箱をぎゅっと握り締めた。
春...
俺は翔と同じ難関大学に見事入学した。