第19章 『ささのはさらさら scene2』~松本×大野~
「潤...言いにくいんだけど...」
翔が役員をしている母親情報でやっと仕入れて来てくれた、大野先生の退職の本当の理由に、
俺は愕然とした。
あの美術研究室での情事を、見られていたんだ。
相手が誰かは分からなかったらしく、
先生はどんなに問い詰められても口を割ることはなくて。
最終的には沈黙を守ったまま、退職願を提出した。
俺のせいだ...
俺が、欲望に任せてあんなことしたから///
学校ではバレないように、って...
智はあれ程気を使ってくれていたのに。
大切にしてきたものが、一気に足元から崩れていった。
自分の命よりも大切だった人が、
急に目の前からいなくなった。
何よりそれは、俺のことを守るため。
俺は...
俺は、なんて馬鹿だったんだ///
智が大切にしてくれていたものを、
俺の軽率な行動が、全てをダメにした...
腕の中にいた青い鳥が、
居なくなった...
絶望って、こんな景色なんだ...
世の中からすべての色が無くなったような...
全ての音が無くなったような...
何もない、虚無の世界。
「きっとほとぼりが冷めたら、あっちから連絡してくるよ...」
翔はそう言って慰めてくれたけど、
俺は分かっていた。
大学に行け。
世界を広げなきゃダメだ。
いろんな人との出会いが、潤を大きくしてくれる。
あの人は、何より俺の将来を気に掛けていてくれた。
そんな人が、ホモのレッテルを張られた自分で俺の隣にいることを良しとするわけない...
智......
会いたいよ...
もう一度、この腕に抱きたい。
潤、って、そう言って笑ってよ//////