第11章 『アザリア』~松本×櫻井~
安心したのか、
翔はそのまま意識をなくした。
「翔さんが調子悪から、マンションまで送ってって。」
マネージャーに言って、
俺は翔の身体を抱き上げて、
車に乗り込んだ...
......俺は、
ずっと前から...
そう、
たぶん初めて会った時から、
翔、君のことが好きだった。
白い肌に、くりくりの大きな目...
その目に意志の強さを宿して、
翔は、そこにいた誰よりも、輝いていた...
そんな彼のことが、
好きで好きで...
子どもだった俺は、その気持ちを
隠さずにストレートに外に出していた。
それから、月日が流れ、
俺も、翔も大人になり...
同じグループの中で、喧嘩もしたし、
我が儘も言った。
つっぱって見たくて、いきがってみて。
......自分がどうしたいのか、
どうなりたいのか、見えなくて、
分からなくて、不安だったあの頃...
俺にとって、翔だけが、
そんな俺を遠ざけたりしないで、
いつも、見ててくれて、
叱ってくれた...
......今の俺があるのは、
翔、君のお陰だよ...
ずっと好きだったくせに、
翔の時別になりたいって、
そう思ってたくせに...
一歩が踏み出せなくて、
近付けなくて...
そんな俺に、
熱で弱った身体で、
『一人にするな』って...
君の方から、殻を破ってくれた...
そのとき、
どんなに嬉しかったか...
俺が越えられなかった壁を、
翔が崩してくれた。
恋することにも不器用な俺の前に、
翔の方から、飛び出して来てくれた...
あの日のこと、
今でも忘れたことなんかない...