第11章 『アザリア』~松本×櫻井~
じっと俺の顔を見ながら、
そのまま、横に座った翔...
気配で分かるよ...
見てなくても、
見てる時よりも、彼を感じて...
それだけで、俺の身体は熱くなるんだ。
翔は、俺のこと、
可愛いって、そう言う。
全然可愛くなんかないのに...
でもね、
翔に可愛いって、
そう言ってもらうのが、
俺はすごく嬉しくて...
彼の視線を感じながら、
それがくすぐったくて、幸せで...
翔は、俺が寝たふりを続けてたら、
俺が見ていた、ブルーレイを起動させた。
...そう、俺たちが付き合うきっかけになった、
『嵐フェス』...国立の映像だ。
俺たちにとっての、
想い出のコンサート。
あの日。
翔は体調を崩していて、
始まる前から熱があった。
薬を飲めば、ラップの切れがなくなる、って、
そう言って、無理してステージに。
俺は心配で仕方なかった。
ずっと翔の側に居たかった。
でも、演出を確認する作業が残っていて、
それができない...
こんな時に、
ついててやれないなんて///
いつも、弱音を吐かない、
俺たちの中では、一番自分に厳しい人...
コンサート中も、
いつも彼の姿を目で追いながら、
視界の隅で、その存在を確認していた。
何とか乗り切った本番直後、
割れるような歓声と拍手が
俺たちを包む...
それを背中に、
俺たちはステージを降りた。
限界をとうに超えていた翔は、
倒れそうになり、とっさに、
伸ばした俺の腕の中に
もたれ掛かってきた。
誰にも気付かれないように...
俺の支えに頼りきっている彼の身体は、
火のように熱かった。
こんなになっても、頑張りぬいて、
きっちりと役目を果たした彼が、
いじらしくて...
そして、
愛おしかった。