第10章 『ささのはさらさら』~松本×大野~
「先生...そんなに、嫌いだったの?
お化け屋敷...」
肩に手を回して、出来るだけ優しく聞く俺に、
先生はやっと落ち着いたのか、
上目遣いに俺のことを見ながら、
大野「...笑っちゃうだろ~?いい年して...」
眉を下げて、申し訳なさそうに言った。
「そんなことない!誰でも苦手なものはあるでしょ?」
懸命にそういう俺に、情けない顔をした大野先生はゆっくり話し出した...
お化け屋敷が、怖い訳。
先生が小学生の時。
地区のお楽しみ会で夕涼み会があった。
その余興として、上級生が恒例のお化け屋敷を企画し、大野先生も友達とそこに入ったとのこと。
月も出てない蒸し暑い真夏の夜。
その中は思いのほか真っ暗で...
もともと怖がりの先生は、
ふとした拍子に友達と離れ離れになってしまった。
出口を探して歩く大野少年を怖がらせようと、
上級生は部屋の戸を抑えて、出られなくした。
「開けて!!出してよ!!」
そう騒いで戸を叩く先生...
その肩に冷たい重さが...
ゆっくり振り返った大野少年が見たのは、
首から上のない、落ち武者の姿だった///
「ぎゃあ────っ//////」
その後のことは覚えていなくて、
気が付いたら、明るい広間に寝かされていて、
心配そうに覗き込んでいたみんなも、
次第に笑い出し...
大野少年は、臆病者のレッテルを張られてしまった。
首のない武者のことを話しても、
誰にも信じてもらえず、
この出来事が、幼い少年の心に、
傷となって残り、
トラウマとなり、翌年からは、
理由を付けては、夕涼み会は欠席していた...
とのとこだった。