第10章 『ささのはさらさら』~松本×大野~
その朝、
俺は送ってくれる親の都合で、
大分早く学校についた。
受付の机にはまだ誰もいなくて、
勝手に入る訳にもいかないから、
俺はその辺をうろうろしてた。
すると、掲示板に、
ビラを張っている人が...
上級生かな?
そう思い離れたところから、
何の気なしに見ていると、
俺の視線に気付いたその人は、
「やあ、新入生かな?」
柔らかな....ほんとに柔らかな、
ちょうど小窓から差し込んでいた、
春の陽射しのような、
優しい笑顔で、その人は俺に笑いかけた。
「あ...はい..そうです」
俺はもう、ドギマギしてしまい、
声も上擦る始末で...
「そうかぁ、早いなぁ(^^)
俺は大野。美術部の顧問をしてるんだ..」
そう言って、彼は手にしたビラを俺に見せた。
「..こっ、顧問??先生なんですか?」
驚く俺に、大野と名乗ったその人は、
また、優しく笑って、
大野「先生に見えないって?フフっ...
まあ、しょうがないか~..
いつものことだしね...ところで、
...えっと..?」
「あっ、松本です。潤です。」
大野「松本潤ね♪よく分かったよ。
で、松本、美術部に入らないか?」
その人の話す言葉が、
何だかすべて綺麗な歌のようで...
俺は瞬きすることさえ、忘れていた。
大野「...どう?」
「どうって...あぁ、美術部..ですか?
俺、絵は全く全然...」
大野「全く全然か!...そりゃあ、
すげー苦手そうだな(^-^)
下手でもいいんだよ、絵は心で描くんだ。
よかったら、一度覗きにおいで♪」
そう言って、大野先生は
ヒラヒラと手を振りながら行ってしまった。
それが、
俺と大野先生の出逢いだった。