第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
今日は俺がひとりで休みで、寂しいだろうからって…
せめてもの贈り物ってことで、みんなで植源さんにお願いしたんだって。
「うわぁ…キレイ…」
「これぁ、明日他のお宅に回るついでに回収に来ますがね」
「うん?」
ニコニコと息子さんが木の裏を指さした。
「夜、あそこにあるスイッチを押してみてください」
「え?え?」
「とてもキレイだと思いますよ」
どうやら、デザインは息子さんが考えてくれたようだ。
「いやあ…クリスマスツリーなら毎年デコレートするんですがね…誕生日のお祝いは珍しかったです」
「あ…なんかすいません…」
「いえいえ。みなさんの大野さんをお祝いしたい気持ちが、すごく…」
「え?」
「ふふ…とっても、仲いいんですね」
「う…うん…」
ちょっと、照れた。
植源さんたちが手入れが終わって帰っていっても、庭のベンチに腰掛けてその木をずっと眺めてた。
「へへ…へへへへ…」
嬉しいなあ。
みんなの気持ちが…
すんごく嬉しい。
しかし…いつこんな計画立ててたんだか…
あんなみんな忙しいのに。
夕方になって、空が暗くなってきた頃。
延長コードが伸びてる先にあるスイッチを押してみた。
キラキラキラキラ…
クリスマスツリーについてるような電飾が、綺麗に光りだした。
みんなはまだ、仕事中だ。
こんなに忙しいのに、俺の誕生日を祝うことを考えてくれて…
しかも俺にはずっとないしょにしてたんだ。
俺だったら隠しきれなかったかもしれない…
みんな大人だなあ…
「ほんと、俺はまだまだケツが青いなあ……」
今年の誕生日は…
ひとりだけど、あったかい誕生日だった。
【おわり】