第17章 芽
「え…?俺がリュカ…?」
「うん…そうだったらいいなって…ずっと思いながら演ってた…」
和也がまっすぐに俺を見つめる。
「いつか…舞台で、あなたと正々堂々と勝負したい」
「え?」
「役者大野智と競演してみたいよ」
舞台だけなら、俺のほうが場数踏んでる。
舞台は踏んだ板の数だけ、上手くなるって言われてる。
「ふーん…受けて立ってやるよ」
「その代わり、映像でも勝負ね?」
俺たちはそれぞれのドラマでちょこっとだけ共演したことはある。
だけど、真っ向から演ったことって、実はないんだよね…
「ああ…絶対な」
そう言ってぎゅっと和也を抱きしめ返した。
芝居でなら…芝居なら、和也と勝負できる。
他のことは、てんで敵わないけど…
いつか。
いつか和也と勝負してみたい。
それがお互いを大きく成長させることじゃないかって思う。
「ありがと…智…」
「うん…頑張ったな…和也…」
暫くそうやって抱き合っていた。
和也の身体が俺に体重を掛けてくる。
いよいよ…と思って和也の顔を見たら…
寝てた。
「か…和也…?」
爆睡して目を覚まさないから、ベッドに寝かせた。
和也…俺、いつまでおあずけ食ってなきゃいけないの…
悲しくなってきた…