第17章 芽
そのまま、翔くんと俺は自分だったらどの役でどんな解釈なのかを話しながら帰った。
良い芝居を見ると、やっぱり芝居をかじったことのある人間なら、こんな話にもなる。
家に着く頃には完全に二人で興奮してて、目が冴え渡ってた。
「おかえりーどうだった?」
雅紀が風呂あがりの姿でリビングにはいってくる。
潤は台所でご飯を食べてるところだった。
「ただいま…いや、凄かったよ…」
二人はリビングに集まると、俺達の話を聞きたがった。
感想は凄いしか言えない。
いい物をみたときって、こんなもんだ。
「やっべ…俺、明日なんだけど…なんか緊張する…」
雅紀が手汗をスエットで拭いてる。
「だよなあ…そんな凄いもんみせられんだろ…?やべえよな…」
潤はまだ後に観に行く予定だ。
「でも…ニノさ…なんかギリギリだよね…」
「え?」
「あんな役、神経張りつめっぱなしだろうからさ…」
翔ちゃんが頬杖をついて、遠い目をした。
「無理、してなきゃいいけど…」
俺も魔王の時、そうなった。
撮影が進むに連れて、ご飯を食べることができなくなってた。