第17章 芽
弟を殺してしまった兄。
和也の熱演が舞台上で続いている。
目を逸らすことができなかった。
それほど、和也は役に入ってて。
客席の誰もが、和也から目が離せなかったんじゃないだろうか。
愛がどんなものかわからない。
弟を殺してから、どんどん狂気を孕んでいく兄に、誰もが釘付けだった。
隣で翔くんが身を乗り出して見てる。
固唾を呑んで、ぴくりとも動かない。
俺も舞台から目が離せない。
和也が、どこまで行くのか。
見届けたいと思った。
舞台の幕が降りると、翔くんと俺は脱力した。
2時間、緊張してたらしい。
見終わった瞬間、疲れがどっと降りてきた。
「翔ちゃん…楽屋いこ?」
「ん…もうちょい休んでから…」
なのにマネージャーが慌てて俺たちを席から立たせた。
舞台裏に連れていかれると、すぐに和也の楽屋に入れられた。
「あ、来てくれてたの?」
「おう…お疲れ」
そう言って、いつも吸ってるタバコを差し入れた。
「ありがと…ちょうど切れてたんだよね…」
「まじか。お前よく保ったな…」
芝居するときは、手放せないって言ってたのに…