第14章 雅やかな旋律
その日はマックスに暑くて。
これから日産スタジアムでのイベントのリハだというのに…
朝からリビングの板敷きの上で、寝転がっている。
「智くん、行くよ?」
翔ちゃんが呼びに来てくれる。
「ああ…」
翔ちゃんは、オリンピックから帰ってきたばっかりだというのに元気で。
あ…そうだ。
「翔ちゃん?」
「ん?」
「あのね…今日、帰ったらアトリエに行ってご覧?」
「え?」
「あの絵…できたから」
「ほんと!?」
「うん…」
あんまり翔ちゃんが嬉しそうな顔するから、照れた。
「楽しみにしてる…」
そう言うと、俺に手を差し伸べてきた。
ぎゅっと手を握ると、翔ちゃんが引き上げてくれた。
そのまま翔ちゃんに抱き寄せられる。
「智くんのお蔭で、今日も一日頑張れるよ…」
翔ちゃんの幸せそうな声が、いつまでも耳に残った。
あんなことで幸せになってくれるなんて…
なんか、嬉しいな。
事務所の車に乗り込んで、今日は一人掛けの席に座った。
イヤホンを耳に挿すと、曲に集中した。
昨日、潤から振り付けの直しを頼まれた。
ほぼできているけど、最後に頭のなかでもう一度。