第4章 ばあちゃんの庭
「なっ…なんだよそれっ…俺は、ニノだからっ…」
そこまで言って我に返った。
これ以上何を言う気だったんだ。
「俺…だから?」
「いや…なんでもない…」
顔を見れなかった。
きっと俺、今、真っ赤だ。
恥ずかしくて、手の甲で口元を隠した。
「言って…?大野さん…」
だめだ…これ以上、何を口走るかわからない。
俺は踵を返した。
ニノが後を追ってくる。
俺の手首を掴むと引き寄せられた。
ニノの胸に倒れこむ。
「え…」
何をされているのかわからず、顔を見上げた。
その時、ニノが俺にキスをした。
キスを、した。
気がついたら廊下で一人で居た。
リビングでニノと相葉ちゃんの声が聞こえる。
唇に触れる。
あれは、夢…?
一体、なんだったんだ?
わけが分からなくて、パジャマのままアトリエへ行く。
まだアトリエの中は冷えてて。
羽織ったカーディガンを引き寄せた。
ニノ…
わかんないよ…
一体、俺にどうして欲しいわけ?
ぶるっと身体が震える。
少し冷えた。
あのキスの事を考えると、他のことが考えられない。
俺はむりやり、絵筆を握った。
そこには微笑むニノの顔が描いてある。
誰にも秘密の絵。
寝顔を描いた。
でも誰が見てもニノだとはわからないと思う。
俺だけの網膜に焼きついてるニノだから。