第12章 空翔ける
じっとりと汗が滲んでくる。
そういえば、翔ちゃんはもうすぐオリンピックの取材に出る。
日本とあっちを行ったり来たり。
とっても忙しい日々になる。
その前に一枚…翔ちゃんになんか書いてあげようかな…
前から、翔ちゃんに頼まれてたけど、すっかりここのところアトリエに入ることもなくなってて。
和也の絵と交互に書くことにした。
和也の絵が乾くのを待つ間、あたらしいカンバスを張った。
奈良さんに教えてもらって、やっと最近できるようになった。
小さな木枠で一枚、完成させた。
「おし…」
さて…翔ちゃんからは、別に絵の内容のリクエストはない。
どんな絵を書こう。
鉛筆を取り出して、スケッチブックを手に取る。
どんなのなら、翔ちゃん喜んでくれるかな…
やっぱり…似顔絵…?
鉛筆を唇につけて悩んでいると、アトリエのドアをコンコンとノックする音が聞こえた。
「はーい」
「智ぼっちゃま…入ってよろしいでしょうか?」
「ぶっ…まだやってんの?」
「はい…緑のぼっちゃまと紫のぼっちゃまから、今日一日やってろとの仰せで…」
「まあ…そうなんだ…怪物ランドのプリンスはそんなこと言わないから、まあくつろぎなよ…」
「ありがとうございます」