第11章 夢ゆら
リビングでは、まだ翔ちゃんがお酒を飲んでた。
「翔ちゃん、俺もちょうだい」
声を掛けると振り向いた。
「智くん…ニノ…」
「あ、私、明日早いからパス。じゃあ、智、あとよろしく」
「えっ?和也?」
ぱたぱたと階段を登っていく音がする。
なんだ…あいつ…
「じゃあ…おひとつどうぞ…」
ビールの缶を手渡された。
「ありがと…」
翔ちゃん、元気がない。
「智くん、そんな格好じゃ風邪引くよ?」
「あ、ああ…着替えてくるね」
急いで二階に駆け上がって、着替えて戻る。
なんでかわからないけど、そうしなきゃいけない気がした。
早く、翔ちゃんのところに戻らなきゃ…
リビングに戻ると、翔ちゃんが新しい缶を開けているところだった。
さっき開けたばっかり…
「ちょっと翔ちゃん!」
「へ?」
「飲み過ぎっ!」
見ると、翔ちゃんの横に転がってる缶はすごい数になってて。
「これは俺が飲みます!」
「え?え?」
取り上げた缶をぐびーっと飲み干した。
「さ、智くん…」
翔ちゃんが呆れた顔で見上げてる。
「…もう…どうしちゃったの?翔ちゃん?」
翔ちゃんはすぐに眉間にシワを寄せて目を逸らした。