第4章 ばあちゃんの庭
「ねえ、相葉さんが遊びにきたがってんだけど」
「え?いいんじゃね?別に」
「ほんと?」
引っ越してから一ヶ月半。
そろそろ寒さも緩んできてもいいころなのに、まだ寒い。
俺とニノはだんだん二人で住むことに慣れてきた。
不思議なことに、今だにニノが”お外”に行ってくることもなく。
まあ…俺も無いんだけど…
お互いの女性関係なんて、把握してるわけじゃないけど。
でもなんとなくニノには彼女がいるなって思ってて。
でもそれが、ここに引っ越してきてからは微塵も感じられない。
どこいったんだ…?ニノの彼女…
不思議に思いながら、俺はアトリエに篭もる。
今は、さほど大きな仕事もない。
キャンペーンとかそんなの以外は、レギュラーの仕事しかない。
この前、奈良さんが遊びにきてくれて、油絵の新しい載せ方を教えてくれた。
俺は久しぶりに、小さめのキャンバスに向かった。
赤と黒を混ぜる。
赤のほうが少なめ。
ぱっと見、黒だけど光の加減で妖しく輝る赤が見える。
もっと妖しさを入れたくて、少し青を混ぜる。
油壺から少し油をとって、筆に含ませる。
ナイフで混ぜると硬い感じになるから、筆で混ぜるのが俺は好きで。
そのまま何回かパレットで筆を撫で付けてから、下書きしてあるキャンバスに向かった。