第1章 家
大晦日も迫った年末。
俺達はこの時期、目が回るほど忙しい。
歌番組の生中継、コンサート、そして紅白。
なのに両親からしつこいほど連絡が入っていた。
忙しかったからすぐに出れなくて、後から連絡したら大叔母が亡くなったと言われた。
正直、顔もよく覚えてない。
そっか、と生返事をして香典の心配なんかもしておいた。
両親が参列するからお前はなにもしなくていいと言われた。
じゃあなんで連絡してきたんだよ。
と、思っていたら…
お前にもしかして、遺産相続があるかもしれない、と言われた。
はぁ?遺産?
大叔母は早くに旦那さんをなくしてからずっと独り身だったと両親が言う。
たしか子供も居なかったと思う。
遺言状の公開を待たないといけないが、生前お前にという話があったということだった。
俺は、遺産相続って言ってもたいしたことねーだろと思って、また生返事をしておいた。
それきり、その話はすっかり忘れていた。
年が明けて、正月休みも終わって寒さが厳しくなってきた頃、弁護士が俺のところに来た。
自宅にやってきたのでびっくりした。
親も一緒に来ていた。
遺産相続の話だった。