第3章 引っ越し
引越し当日は、案外すんなりと終わった。
引っ越し時間中は、俺は外に居た。
作業員が帰ってから家に入った。
事務所の人間が代わりに立ち会ってくれていたので、話を聞いて。
開梱も頼んでいたから、ある程度荷物は片付いていた。
後はもう自分で片付けるだけだったから、事務所の人間は帰した。
玄関まで見送っていくと、ニノが帰ってきた。
「あら、おつかれさん」
そう言って、すれ違う。
玄関で俺の顔を見ると、にっこりと微笑んだ。
「ただいま」
あんまりかわいい笑顔で、直視できなかった。
「おかえり…」
「今日から、よろしくね」
そう言って俺に手を差し出してきた。
「よろしく…」
いや、ここ俺んちだし…
ニノは俺よりも3日早く越してきていた。
そりゃ、スケジュールの都合があるからしょうがないけどさ…
家主より早く入る?
もう意味わかんないんだけど…
でもなんとなく許せちゃうのは、こいつだからか…
「荷物、片付けた?」
「ん?これから」
「手伝うよ」
「いいよ。疲れてるだろ?」
「いいって。今日はスタジオだったし」
そう言いながら、俺に手を差し出した。
なんとなくそのまま手を取ったら、靴を脱いで玄関に上がった。
俺は手すりか。