第14章 きみどり scene5
「あいつだな?」
さとの口が、俺の聞いてほしくないことを聴いてくる。
答えられない俺の前にきて、顔を覗き込む。
しっかりと俺の目を見ると、さとは俺の答えを待った。
さとのスマホが震えて、着信を知らせる。
でも、さとは俺の顔を見たままだった。
「かず…答えて」
喉が張り付いたように声が出せない。
そんな俺の身体を引き寄せて、さとは俺を抱きしめた。
「ごめん…気づけなくて…」
ぎゅうっと痛いくらい、俺のことしっかりと抱きしめる。
「さと…」
「守るから…お前のこと、守るから…」
ごめんね…言えなくて…
ごめん、さと
「だから、かず…俺に、言って?あいつに何されたの?」
だめだ…
あんなこと、言えない
薬のせいとはいえ、イカされまくって…
あいつのオナネタにされて…
そんなこと、言えない
「かずが言わないなら、あいつに聞くしかないよ?」
「やっ…やだっ…やめてっ…」
「じゃあ、かず…ちゃんと言ってよ」
「さと…」
「俺、頭悪いから…翔ちゃんみたいに物事が見えないから…辛いだろうけど、言って?」
「さと、それは違うよ…」
「ふたりで、考えようよ。どうしたらいいか…」
さとの声が震えてる。