第14章 きみどり scene5
無茶苦茶な力で腕を引っ張られた。
「痛いっ…」
思わず大きな声が出てしまった。
「おい…あんた…」
さとが、アイツの肩を掴んだ。
「離せよ」
ぎりっとさとの手に力がはいるのがわかった。
「かずに触んな」
低い…聞いたこともないような声だった。
アイツの手が緩んだ瞬間、さとは俺の手を掴んだ。
「いくぞ」
「さとっ…」
さとは急に立ち止まって、後ろを振り返った。
「チーフにスケジュール確認するから、ロビーで待ってろ」
「そ、そんな…」
「仕事が本物なら俺も行く。準備してくるからそこで待ってろ」
立ち尽くすアイツを残して、俺たちは自分たちの部屋に帰った。
ものすごい早足で歩くと、すぐに部屋のドアを閉じた。
リビングまで無言で俺を引っ張っていくと、ソファに座らせた。
「さと…あの…」
「待ってて…チーフに連絡する」
スマホを取り出して、電話を始めた。
「あ。もしもし…大野だけど…」
さとはすぐに俺のスケジュールの確認を始めた。
「…入ってないんだね、わかった」
電話の向こうでチーフが何か言ってるけど、さとは電話を切ってしまった。
スマホを持ったまま、俺に振り返った。
その顔は、怒りに満ちていた