第14章 きみどり scene5
少しそれを揺らすと、俺の向かい側に腰掛けた。
こんなこと初めてだった。
「あいつがなんかしたの」
「…してるから来たんだ」
はあ、と深い深いため息をついて窓の外を見た。
ここは眺めがいい。
「あいつ、どういう事情で俺らについたわけ?」
「核心は話せない」
スパッと切り捨てるような言い草だった。
「…一年だけ、嵐の…しかも二宮のマネージャーにしろってねじ込まれたのよ」
「…は?なんだよそれ」
「NHKの…幹部からねじ込まれた」
「は…?なんなの?あいつ、その幹部の弱みでも握ってんの?」
「…だから、核心は言えないと言ってる」
「で?それを了承したわけなんだ」
「どうしようもなかったのよ…だってあいつ…」
「日本国籍じゃないんだろ?」
「……」
「今度はだんまりかよ。まあいい。とにかく逆らえない筋から、あいつを押し付けられたってわけね」
けーこさんは、俺の方を見ようとしなかった。
これは昔からの悪い癖。
全部知ってるのに、俺に気取られないためのポーズ。
「けーこさん…ニノがあいつに何されてるか知ってるの?」
「え?ちょっと待て、櫻井…」
チーフが慌てて話に割って入ってきた。