第14章 きみどり scene5
途端にぐっと詰まった顔をした。
「どういう…?」
「アンタも智くん並のお人好しかよ…」
「どういうことだ?ちゃんと説明しろよ」
「いいけど…副社長といっしょにね」
「は?」
「今日居るんでしょ?けーこさん」
「いや、お前…」
「なんなら社長でもいいんだけど?」
「…お前…」
「穏便に済ませられんのは、今しかないと思うけど?」
「脅してんのか」
「社長に話すのと、けーこさんに話すのどっちがいいんだよ」
苦虫を噛み潰した上に、更にピータンを食べたような顔になった。
「ちょっと待ってろ…」
スマホを取り出すと電話し始めた。
終わると俺の方を向いて顎をしゃくった。
ついてこいという。
エレベーターに乗り込んで、最上階に昇る。
ここには社長室と副社長室が並んでる。
二つある副社長室のうちの一つに灯りが灯ってる。
ノックをすると、中からけーこさんの声が聞こえた。
「失礼します」
チーフが入っていくと、それに続いて俺も足を踏み入れた。
ここには何度か来ている。
だけど、今日ほど嫌な空気を感じることはなかった。
「なんなの。櫻井」
「すいません。お時間ください」
指し示された茶色のソファーセットの下座に座る。
見上げると、いつもどおり緩やかなカーブを描く髪が目に入った。