第14章 きみどり scene5
「わあ…掛け流しだ。贅沢だな」
「うん…」
かずの手を引いて、浴槽まで近づくと桶を手にとってお湯を汲んだ。
少し熱い。
でもそれをちょびちょび身体に掛けて慣らした。
俺が終わるとかずもしゃがませてお湯をかけた。
デッキの床は隙間が開いてるから、そこからお湯が逃げていく。
かずの身体も温まったから、そのまま二人で浴槽に飛び込んだ。
「うーっ…沁みる…」
中にもう一個バスルームがあるから、ここには温泉しかなかった。
デッキは二段に分かれてて、浴槽のある下にもう一段デッキがある。
きっとここで涼んだりするんだろう。
「夏にきたら、あそこでビールとか飲むと気持ちいいだろうね」
「うん…」
かずは俺に抱きつきながら、目を閉じてる。
「また、来年…ここ、来ようね…?」
それには、返事をしなかった。
ただ、目を閉じて微笑んでいた。
少し温まるとのぼせそうだったから、俺は外に出た。
かずにはもうちょっと浸かってろっていって、俺は下のデッキに置いてある木のベンチに腰掛けた。
「タオルくらい着けなよ…」
「え?誰も見てないからいいだろ?」
「俺が見てるよ」
「もう見飽きてるだろ?」
そう言うと、本当に綺麗な顔で微笑んだ。