第14章 きみどり scene5
俺もかずも頭がぼけっとして、ちっとも働かなくて…
そんな俺達を翔ちゃんは、黙って箱根まで連れてきてくれた。
チェックインの手続きまでしてくれて、翔ちゃんは東京に帰っていった。
「マネージャーとかには俺から伝えておくから、気にしないでゆっくり休みなよ?」
帰り際、車の窓から顔を出して翔ちゃんは微笑んだ。
「うん…ごめんね、いろいろ…」
「大丈夫だよ。ニノ、身体に悪い所がないんだからさ。きっと…ここでゆっくりすれば、なにか道も見えるんじゃない?」
「え?」
ふっと笑うと、翔ちゃんは窓を閉めて車を発進させてしまった。
なにか、意味深だったなぁ…
ホテルに戻ると、部屋に入った。
かずは先に部屋に入らせておいたから、洋室のソファに沈み込んでいた。
さすがに、長時間の車はキツかったかな…
このホテルは、最近改装されたとかで、とても綺麗だった。
部屋はなんと、スイート。
翔ちゃんからのプレゼントだって言うからさ、びっくりして。
絶対後でお金返すって言ったけど、それはニノが元気になってからにしてくれって笑われた。
部屋は3部屋あって、リビングと間続きのベッドルームと、和室。
和室にはこの部屋だけの露天風呂が付いている。
窓からは箱根の山々が見渡せて、とても気持ちがいい。
リビングのソファで、かずはぼけっと外の景色を眺めていた。