第14章 きみどり scene5
「智ぃ…」
夜、風呂から上がると弱々しいかずの声が聴こえる。
寝室にいくと、ベッドに寝転んだまま俺に手を伸ばしてくる。
「どした…?かず…」
「ん…」
上目遣いで俺を見ると、目を閉じた。
「抱いて…?」
ぐっと掴んだ手を引かれて、かずの上に倒れ込んだ。
「でも、かず…」
「お願い…俺に挿れて…?」
「だめだよ…ね?」
「嫌…抱いて…お願い…」
閉じた目からぽろぽろと涙が落ちてくる。
「おねがい…さと…」
そのまま何もできなくて…
じっとかずの身体を抱きしめていたら、かずはいつの間にか眠ってしまっていた。
顔を見たら、苦悩が滲み出てた。
なんにも…できない…
無力感に襲われてると、スマホが鳴った。
リビングに置いていたので、そっとかずから離れた。
スマホを手にとってソファに座ると、翔くんからだった。
「もしもし?」
『あ、智くん。ごめんね夜遅くに』
「ううん…なんかあった?」
『いや、あのさ…良かったらなんだけど…』
次の日、快晴だった。
ここは箱根。
翔ちゃんが、ここまで送ってきてくれた。
俺達は今日から3日、ホテルに泊まることになった。
ドラマの撮影で、近くのホテルきたことはあるけど、ここは初めてだった。