第14章 きみどり scene5
「なんか、最近かず…その…寂しそうな顔するから…」
「えっ…」
かずは慌ててほっぺを手でぺちぺちする。
「そ、そんな顔してた?」
「ん…なんか、不安なのかなって思って…」
「さと…」
かずはまた、スケッチブックを見つめた。
「不安なんて…あるわけないよ…」
「ほんと?」
「もう、さとは心配しすぎ…」
「そうかな…」
ぎゅっとかずは俺の手を握った。
「でも…ありがとう。とっても嬉しい」
「うん…」
見つめたかずの顔は、あの日みた笑顔を湛えてた。
「かず…」
「…ん?」
なんでそんな顔するの…?
なにがそんなに不安なの…?
「愛してるよ」
「さと…」
「愛してる…」
握られた手を、ぎゅっと握り返した。
「俺も…愛してるよ…さと…」
そっと俺を抱き寄せると、かずはそのまま黙り込んだ。
やっぱり、元気がない。
魔法の言葉、もう効かない…
どうしたの?
俺には、言えないことなの…?
「さと…なにがあっても…離さないでね…」
「当たり前だろ…離さない」
「うん…」
「かずが嫌がったって、ずっと離さない」
「うん…」
きゅっとかずは俺の背中に腕を回した。
「ずっと…愛してるよ…さと…」