第14章 きみどり scene5
「かーずー」
「んー?」
「ちょっときて?」
「うん?」
ソファから首だけこっちに向ける。
「なによ?」
手元のゲームはやめる気がないらしい。
「こっち、来て?」
しぶしぶゲームをやめると、こちらにトテトテ歩いてくる。
「なによーもー」
「いいから、ここ、座って?」
「ん」
ぺたりと女の子みたいに座ると首を傾げる。
「なあに?」
「これ、見て」
さっきまで描いてた大きなスケッチブックを渡す。
「んー?」
表紙をめくった手が止まった。
「え?これ…俺…?」
「うん…えへ…」
そこには和也の絵を描いた。
一番最初…そう、あの台風の日見た、かずの顔。
「いつ…こんな…」
「んふふ…どう?」
「なんか…え?俺、こんな顔した?」
「したよ」
「いつ?」
「俺達が付き合った日」
「え?そんな前なの?」
「うん…」
忘れることができなかった。
あんなにしあわせで寂しそうな顔、見たことなかったから。
「なんで…これ描いたの…?」
「ん…?そうだな…」
かずが不安げに俺の顔を見てる。
最近、なんでだかこんな顔をする。
「俺…ずっとお前のそばにいるよって言いたくて…」
「え?」