第13章 漆黒
「それでもいい…一晩だけでもいい。だから…行かないで…」
身体の欲を発散するだけでもいい。
その相手に…俺を選んでくれたんだよね?
何をこだわる必要がある。
今まで触りたくても触れなかった。
その素肌が、今この腕の中にいる。
それだけで、充分じゃないか
「ごめんね…さあベッド、戻ろう…?」
「なんで…?」
「え?」
「なんでそんな優しくしてくれるの…」
「だから…あなたはわかってるから、俺のこと誘ったんでしょ…?」
そう言うと、黙った。
ただ、はらはらと涙を溢して力なく俺の腕に凭れてる。
「一晩だけ…あなたの男にしてよ…」
そう…
それだけでいい
大きく目を見開いて、俺を見上げる瞳。
真っ赤になって…大粒の涙を零す。
「一晩だけ…愛して…」
頬を伝う涙を親指で拭うと、あなたは目を閉じた。
「うん…」
そっと細い身体を抱き上げた。
そのままベッドルームまで身体を運ぶと、マットレスに横たえる。
きれいな身体は、どこまでも俺を誘った。
「キスしてもいい…?」
「あ…待って…」
最後まで言わせたくなくて、強引に唇を塞いだ。
それは夢にまで見たぬくもり。
甘い、舌。
ねっとりと絡む唾液。
全てが夢のようで、俺は夢中になって貪った。