第13章 漆黒
「待って…!」
一瞬、全ての思考が止まってしまった。
けど身体は跳ねるように起き上がると、その美しい裸体を追いかけていた。
リビングルームの入り口で、やっと捕まえて抱きしめる。
「離して…ごめん…ごめんね…」
泣きながら腕の中で身を捩るのを、必死で押さえる。
「ごめん…わかってたつもりなんだけど…」
「ううん…俺が、いけないんだ…こんなこと…しちゃいけなかったんだ…」
「違う…俺が、ここに来るって決めたんだ…わかってるつもりだよ…なのにあんなこと聞いて、ごめん」
「謝らないでっ…俺がっ…俺が悪いっ…」
「違うんだ…俺は…」
ぎゅうっと抱きしめた腕に力を入れた。
どうやったら、伝わる…?
「俺はいいんだよ…弄ばれててもいいんだ。それでも、一緒に居たかったから…ついてきたんだよ…?」
「…え…?」
「俺に気持ちがないのは…わかってるから…」
そういうと、一気に体の力が抜けた。
がくんと倒れそうになるのを受け止めて、抱き寄せた。
「な、んで…?なんでそんな…」
「わかってるでしょ…」
俺が、あなたのことを好きだから…
だから、誘ったんだよね…?
わかってるんだ。
俺達は、互いの心なんて…
遠に、見通してたんだ