第13章 漆黒
「えっ…なにが?」
「だって…震えてる…」
ボトルを持つ手を、両手で包まれた。
「緊張、してる?」
「え…うん…」
きまり悪くて顔を見られない。
「ごめん…俺が無理言ったから…」
「えっ…いや、そんなこと…」
ホテルに行こう―――
そんな直球な言葉を聞いた時は、信じられなかった。
何度も聞き返して、その言葉の意味に気づいた時、俺は暫く衝撃で動けなかった。
でも俺には、断ることはできなかった。
だって…俺はこの人のことが…
「無理、だよね…?やっぱり…」
「え…?」
「男同士だもんね…それに…同じグループのメンバーだし…」
「い、いや…」
「ごめん…やっぱり、帰るね?」
悲しそうな顔を俺に向けた。
「だっ…大丈夫だからっ…」
「え…」
「無理じゃないっ…無理だったら、来てないよ…」
「でも…」
「いいから…帰るなんて言わないで…」
ボトルをチェストの上に置くと、立ちすくむ身体を抱き寄せた。
「不安にさせてごめん…」
「ううん…」
「嫌じゃないし…無理でもないから…」
「うん…ありがとう…」
バスローブの胸に顔を埋めて、安心したように脱力する。
髪の毛から、俺と同じシャンプーの匂いがした。