第13章 漆黒
~125号室~
「お先…次、どうぞ…」
髪をバスタオルで拭きながら、バスローブを羽織ってリビングルームに入ってくる。
ソファに座る俺の隣に腰掛けて、顔を覗き込む。
「え?」
「だから…次、どうぞって言ったの」
「あ、ああ…」
濡れた黒髪から、水滴が滴ってる。
こんな姿、今までコンサートとかで何回も見てるのに…
なんか凄く色っぽくて、正視できない。
「…どうしたの?」
「い、いや…どうもしない…」
慌てて立ちあがってバスルームへ向かった。
心臓がどきどき煩い。
熱めのシャワーを被って、心を落ち着かせる。
こんなに緊張するなんて…
初めての時みたいだ。
ほっといたら昂ぶってくる身体をなんとか鎮めて、シャワーを終える。
きゅっとカランをひねった瞬間、脳裏にさっきの姿が浮かんで…
「やべ…」
ひとりごちながら、慌てて脱衣所に戻る。
身体を軽く拭いて、バスローブを羽織るとリビングルームへ戻った。
テレビを見ながら、水を飲んでいる。
俺も冷蔵庫を開けて、水のボトルを取り出した。
蓋を開けてその場でゴクリと一口飲んだ。
少し、手が震えた。
どうしよう…こんなに緊張してる…
「大丈夫…?」
いつの間にか後ろに立っていた。