第13章 漆黒
それを2個作ってソファにどかりと座り込む。
「はい、かんぱーい」
瓶を手に持たせてカチリと合わせる。
「乾杯」
にっこり笑ってライムを落とすと、ぐびりと飲み込んだ。
「お…このライム美味しい」
「ほんとだ。スーパーで買うのとはわけが違うね」
「さっすが高級ホテル」
「ふふ…コロナビールなんか置いてるなんて珍しいね」
「このホテルが南米系の会社だからじゃない?」
「へえ、そうなんだ」
多分、コロナビールが南米のビールだなんてわかってないだろうけど、適当に相槌を打つのがこの人らしい。
利き手の左手に瓶を持ち変えると、空いた右手で隣の左手を握り込む。
「ん…?どうしたの?」
「手、繋ぎたかったの」
「ふふ…甘えっこ」
「だって年下だもん。甘えさせてよ」
「いいよ」
急に手を手繰り寄せられた。
肩を抱かれて、胸に寄りかかった。
「いっぱい甘えろよ…」
「うん…」
コロナビールの泡がシュワシュワと上に登っていく。
ライムに小さな気泡がいくつもついて、とても綺麗だ。
それを眺めつつ、刺激のある液体を喉に流し込む。
二人で、ただ黙って…
時が来るのを待ってる。