第13章 漆黒
「おいで…」
手を引いてバスルームへ行く。
お互いの服を脱がせ合うと、すぐに熱いお湯を浴びる。
「熱い…」
「風邪引いちゃうから…ね?我慢して…」
頭から足の先まで丁寧に洗うと、スッキリとした顔をした。
「髪、乾かしてあげる」
洗面所にあるスツールに腰掛けると、バスローブを羽織って後ろに立つ。
鏡越しに見ていると、俺を見つめたままゆっくりとドライヤーを動かした。
緩やかに、しなやかに動く指先は、とても美しかった。
今だけは、この指も俺のもの…
髪にかかる手を握ると、口元に引き寄せた。
そのまま指にキスすると、恥ずかしそうに手を引いた。
「あ、後で…」
あんまり可愛らしくて、思わず笑う。
「わ、笑わないでよ…」
ドライヤーを持ち直すと、また髪をさらさらと乾かしてくれる。
乾いたら、交代した。
最近、役作りで長くなった黒い髪をゆっくりと乾かした。
「やっぱり猫っ毛だね」
「うん…扱いにくい」
「じゃあ、すぐ切っちゃうの?」
「うん…もう邪魔だし…撮影終わったら切っちゃう」
「そっか…」
乾かし終わったら、その黒髪にキスをした。
潤んだ目が、鏡越しに俺を見ていた。