第12章 ピスタチオ fromショコラ
「黒っ…」
がばっと起き上がると、そこは大野さんちの寝室。
遮光カーテンの間からは少しオレンジ色の光が漏れていた。
「あ…?あれ…?」
隣で大野さんはすうすう眠ってる。
「なんだ…夢…」
わんっ…
頭のなかに犬の声がした。
「えっ!?」
慌ててベッドを飛び出すと、寝室のドアを開けた。
「わあっ…」
ぶわっと何かが俺に飛びついてきた。
それは真っ黒で…
「く、黒っ!?」
なんだかよく見えないけど、もやもやした塊が俺にぴょんぴょん飛びついてる。
「あ…黒、だよね…?」
そっと黒い塊を抱きしめるように手を伸ばした。
「あ、ありがとね…黒のお陰で俺…」
わんっ…
また声が響いたかと思ったら、黒い塊はリビングの窓の方にすーっと消えていった。
「…え…行っちゃった…?」
呆然と窓の方を見ていた。
いつの間にか後ろに大野さんが立ってて…
「どうした?」
「あ…」
見上げたら、とっても男前がこっちを見てて。
でも頭ボサボサだし、よだれの痕ついてるし…
ヨレヨレのTシャツ着て、だぶだぶのパジャマズボン。
でも、俺には…とっても愛おしい…
「黒がね、挨拶に来たの」
「へ?」
「多分、もう来ない気がする…」