第12章 ピスタチオ fromショコラ
「ま、またさー、犬降ってきたらやばいっしょ?だから、早く楽屋戻ってよ!」
ちょっと声を張って、陽気に言ってみた。
そしたら大野さんは顔を上げて、俺の顔をじっと見た。
「…別に…やばいことなんてないんじゃない…?」
「え…?」
大野さんの手が伸びてきた。
俺の前髪にふっと指が触れると、勝手に身体が強張った。
思わずぎゅっと目を閉じると、まぶたの上に手が置かれた。
「寝ろよ…」
「…うん…」
そのまま大野さんの掌の熱を感じながら、俺はなぜか素直に眠りに落ちていった。
不思議だった…
あんなに近くにいるとドキドキするのに…
温かい手がなんだかとても安心した。
あ…いいにおい…
大野さんの…におい…
目が覚めたら、マネージャーが傍に居た。
「二宮さん…大丈夫ですか?」
そういうと、どこかに電話を始めた。
俺の目が覚めたことを報告しているから、チーフにでも掛けてるのかな…
まだぼーっとする頭を振って、目を覚まそうと努力してみた。
電話が終わると、俺の方を向いて頷いた。
「もうすぐ収録が始まります。最終打ち合わせには間に合いますから、メイクと着替え行きましょう」